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1 取り調べに応じる義務について
①逮捕・勾留されている場合
逮捕・勾留されている場合には,取調べに応じる義務(取調受忍義務)があるとされています。そのため,取調室への入室を拒否したり,取調中に取調室から自由に退室することはできません。
しかしながら,取調官に対して何を話すかは被疑者の自由です。また,取調官の質問に対して答えたくなければ答える必要はありません(黙秘権)。
また,暴行や脅迫を伴う取調べなどが行われた場合は,供述調書を証拠として利用できなくなることがありえます。
②逮捕・勾留されていない場合
逮捕・勾留されていない場合は,取調べに応じる義務はありません。
取調べを受けるとしても,本人の意思でいつでも取調室から退室できます。
しかしながら,特段の理由なく出頭要請を断り続けたり,捜査機関からの連絡を無視し続けると,逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると判断されて,逮捕されることもありますので注意が必要です。
2 取り調べの日時の変更について
①逮捕・勾留されている場合
逮捕・勾留されている場合は,取調べに応じる義務があるとされていますので,取調べの日時を変更するよう求めることはできません。しかしながら,体調不良等がある場合は,事実上ある程度考慮してもらえるでしょう。
また,取調べと弁護士の接見のタイミングが重なったときは,通常,取調べを中断してもらうことができます。
②逮捕・勾留されていない場合
逮捕・勾留されていない場合は,取調べに応じる義務自体がありませんので,日時を変更してもらうことは可能ですし,通常,不利益はないでしょう。担当警察官に申し出ればほとんどの場合,応じてもらえるでしょう。
3 取り調べ内容について
事件の状況やその前後の行動,事件の背景事情,被疑者の生活状況等が聴取され,取調官によって供述調書が作成されます。供述調書は被疑者の話を聞いた取調官がパソコンで作成します。
取り調べにおいては,被疑者自身の身上経歴についての聴取と,事件そのものに関する聴取があります。
取調時間は,場合によりけりです。短い場合は30分程度で終わる場合もありますが,何時間もかかることもあります。
基本的に取調室は一般の方がイメージするような狭い部屋で行われ,警察官1~2人で行われます。日本では弁護士が一緒に取調室に入ることは事実上できません。
現在では,警察官が殴ったり蹴ったりしながら自白を迫るようなことはないようですが,警察官からの無形の圧力がかかることはありえます。
4 取調への対応について
①自白事件の場合
記憶のとおり,ご自身がやってしまったことをお話し,反省の態度を示してください。
②否認事件の場合
否認事件においては,以下の権利があることを覚えておいてください。
①黙秘権
取り調べに際して,自己の意思に反して供述する必要がない旨,取調官から告げられるでしょうが,その権利です。要は,話さなくて良いという権利です。黙秘権を行使するかどうかは,弁護士とよく相談して決めるべきでしょう。
②供述調書に署名押印する義務はないこと
③供述調書に誤りがある場合には,修正を求めることができること
供述調書に署名押印する前に,必ず内容をよく確認してください。誤りがある場合には,削除訂正等を求めてください。修正されない場合には,署名押印しないでください。
あとから,撤回することは事実上不可能です。後の取調で訂正すればいいのでは,と考えるかもしれませんが,裁判所は,供述に変遷があるのは信用できないとして,最初の不利な供述を採用してしまう場合がほとんどです。